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レポート

【モノグサ×SRJ】Edtech企業の代表対談! AI時代に必要な国語力を考える

2021年11月12日(金)に、『【モノグサ×SRJ】Edtech企業の代表対談! AI時代に必要な国語力を考える』セミナーを開催いたしました。
教育現場では、英語やプログラミングへの注目度が高まっている昨今ですが、これからの時代を生き抜いていくためには国語力は大変重要です。
入試だけではなく、社会人としての力をつけるのにも重要な国語力とは? ICT教育で国語がどのように変わっていくのか? ICT教育にご興味のある方を始め、教育関係の皆様に本セミナーの模様をレポートいたします!

竹内孝太朗様写真

竹内 孝太朗(たけうち こうたろう)

モノグサ株式会社 代表取締役CEO
名古屋大学経済学部卒

2010年 株式会社リクルート入社
2013年 「スタディサプリ」にて高校生向けサービスの立ち上げに従事
3児の父、Monoxerを利用したAI時代の英才教育実施中

堀川直人写真

堀川 直人(ほりかわ なおと)

株式会社SRJ代表取締役
株式会社ウィザス取締役
一般社団法人 教育アライアンスネットワーク(NEA)理事
一般社団法人 日本青少年育成協会 理事

1973年 大阪府生まれ 関西学院大学商学部卒
株式会社SRJ代表として速読解を通じた能力開発の有効性を訴え続けている

小学校における国語を取り巻く現状

小学校の国語は重要、一方で教育現場は英語や算数に重点を置く傾向に

竹内:時間数でみると、国語にはこんなにも授業時間数が使われていることがわかります。我が家には子どもが3人おりまして、その中に小学2年生がいます。その子の周辺情報から小学校低学年の国語は、主な授業内容が「音読」、宿題が「漢字」ではないかと推測しています。
語彙の意味、文章の構造、内容の理解を深めるといったことは、小学2年生までには行っていないという感覚です。

堀川:小学校では英語の授業時間数が増えていますね。国語力がない土台に、外国語の勉強はどうなのだろう?という1つの疑問があがってきます。弊社の速読教材を導入されている会員さん達からは、「国語力が固まっていないから、速く正確な文章読解ができない」という声を耳にすることがあります。

竹内:中学入試において上位校の国語の入試問題は、難関私立大学の現代文と同じくらい難しいといわれています。中学受験で上位校を目指すには、小学5年生までにどれくらいの語彙数が必要か今調べているのですが、25,000語程度であることがわかりました。
一方、英語は中学3年生までにその10分の1の2,500語を憶えれば良いことになっています。もちろん、これでは英語を母国語とする国で話せるレベルには達しませんが、国語より圧倒的に憶えることが少ないことがわかります。
国語は憶えることが多い教科といえるのに、学習にかける時間は少ないと思います。家庭のサポートがなければ、学校だけでは足りないということが気になったポイントです。

堀川:私も同様な問題を感じています。塾も保護者も国語よりも算数、英語、プログラミングの学習に目が向いています。

中学校における国語を取り巻く現状

理系教科にも読解力は必要、読書スピードを上げることは成績向上の土台

堀川:指導要領が改訂され、中学校においては国語だけでなく全体的に教科書のページ数が増えました。理系科目でも読解力が必要とされ、文章題も増えました。

竹内:処理量が増えてきたということは明確です。

堀川:ここで教育者の方に問いますが、生徒さんたちの読書スピードを把握していますか?読書のスピードは成績向上の土台です。読解力とともに、読書スピードが基礎能力の1つの判断材料になることは確かです。

高校における国語を取り巻く現状

大学受験で読むスピードが問われる、「文字/分」を数値化して明確に

堀川:大学受験では、読むスピードによって大きな差が出てきます。大学入学共通テストで読むスピードを「500文字/分」と「1200文字/分」で比較すると、速く読んだ方が問題を解く時間が圧倒的に増え、余裕も生まれます。

竹内:「どれくらいのスピードで読めているか」を数値化して可視化しないと、テストに失敗した理由が「早く読む力がなかった」のか「解くテクニックがなかった」のか判別ができません。 早く情報を処理すること、ここに注目していかなければ最終的に大学受験の本番で困ることになります。欧米では1分間に何ワード読めるか、WPM(ワード・パー・ミニッツ)が意識されています。日本語ではワードという単位の概念が異なるかもしれませんが、小中学校から意識していくべきだと思います。

竹内:高校では科目再編も行われました。「論理的に読む」、「正しく情報を読む」という方向にアクセルが踏まれたのです。私はこれを「契約書が読めるかどうか」と判断しています。正しく文章が読めない人が、現在では非常に多いのではないかと懸念を感じています。

堀川: 契約書を読めるかどうかは、論理的に読み、正しく情報を読み取ることができるかどうかがベースにあるわけですね。

竹内:国語では「羅生門を読むべきか」といったことが話題になることがあります。つまり、心情把握か論理かということです。我が家の子どもを見ていますと、子どもが読みやすい本は心情把握が多いようで、小中学校では、論理的に読める題材が少ないように感じています。
論理的に読む力をつけるには高校からでは遅い、小中学校から始めなければならないと思っています。

堀川:大学入試や社会人としての力をつけるために、「逆算して小中学校で何をやるか」をもっと考えなければなりません。

教科書を読解できていない子ども達

ICTを活用して、短い文章を反復することで語彙力を鍛えていく

堀川:文中において言葉の95%以上を理解していないとすらすら読めない、という研究報告があります。早く的確に文章を理解する力は、早く読むだけでなく、短い文章を反復して語彙力を鍛えていくことが重要です。これは、ひとつの問いにひとつの答えを結び付けることになるので、ICTの強みが活きてくるところです。

竹内:家庭学習の習慣がほとんどない子どもが読む文章は教科書ぐらいです。しかし、教科書では必要な語彙は網羅していません。教科書以外の文章に触れないと、根本的に求められている水準に達しないと思います。堀川さんがおっしゃるように、語彙を習得するのに有効で特徴的な短い文章を高反復することが重要です。

読解力は国語科目にとどまらない

国語に力を入れないと、根本的に困りいつか負債になる

堀川:教育現場ではZoomなどを取り入れ、保護者との接点が増えたにもかかわらず、国語の重要性はなかなか伝わっていません。テストにおける目先の点数、教科では英語やプログラミングに視線の先が向いています。
国語以外の科目でも読解力の相関性が大きいことを、保護者にも伝える発信力が現在の教育現場には必要なのではないでしょうか。

竹内:英語は小学校で単語を700、中学校で1,800憶えれば良いわけですから、塾での成果がでやすい。一方で国語は即時性に欠けるので、保護者目線で考えると国語以外の教科に目が向いてしまうのかもしれません。
塾の現場で国語を3ヶ月でなんとかしてください、と保護者から言われても結果を出すことは不可能に近いと思います。早くから国語に力をいれないと、根本的に困る、いつか負債になることを伝えていきたいです。

モノグサ竹内とSRJ堀川が考える国語力

語彙を習得し短文を多読、その上でWPMを意識して国語力を身につける

堀川:国語に必要な要素は、ここに示した通り「語彙」「文法」「読解力」です。語彙と文法の一部は、十分にICTでカバーできます。ICTの強みを活かせる部分ですね。

竹内:アナログの時代にはいったい何をやっていたのだろう? と最近考えます。

堀川:マーカーをひくなど、随分と効率の悪いことを行っていたように思います。

竹内:アナログで日本語の説明するのは、難しいことです。前職で、生徒に英語を教える機会があり「each」という単語を「それぞれ」と教えると、「それぞれって何ですか?」と質問されたのです。実はそのとき即答ができませんでした。
語彙を説明するには、「言い換える」「イメージで伝える」「例文を使う」といった3パターンがあるそうですが、子どもの場合「言い換え」は堂々めぐりになる可能性があります。そこで、その生徒が野球部であったことから「それぞれのグローブ」とイメージで伝えてみました。アナログでは、自分の体験からイメージすることで語彙を理解するといった方法しかないようです。
あとは例文ですね。イメージで伝えにくいもの、例えば「忖度」なら「あの人はいつも、社長に忖度する」など例文で理解して憶える方法です。
アナログで語彙を習得するとなると、何万語も収録されている辞書の例文を読むなど、非常に難しいのです。

堀川:語彙は私も憶えるのに苦労しました。

竹内:語彙はICTを活用して短文に数多くふれるしかないと考えます。それが読解力につながります。

堀川:文法はどうですか?

竹内:日本語の文法を正しく教えられる方って、どれくらいいらっしゃるのでしょうか? 
現在、私は外国人に日本語を教える教師に注目しています。日本語を文法的に教えるということは、かなり難易度が高いと思います。
日本語には名詞文、動詞文、形容詞文の3つしかないそうです。「かわいい!」「りんごだ」で通じてしまう、日本語は「なんでもアリ!」なのです。強いて言うなら、述語が最後にくるから油断するなよ、と教えるくらいで、助詞の「は」と「が」の違いを正しく説明するなんて相当難しいことです。

堀川:英語と日本語は文法が明らかに違います。小学校の低学年から日本語の文法をどのように指導するかがポイントになると思います。

竹内:日本語は、主語がなくても成立します。いくつもの文章の中で主語っぽく働く単語もあります。主語はどれでどういう関係にあるか、短い文章を多読していくことで文法構造を把握していくしかないと考えています。

堀川:基礎的読解力をつけるには、短い文章を読んでいくことですが、それすら読めない子どもも増えています。心情理解につながるかどうかは別問題として、ここにスポットをあてていくことが重要だと思います。

竹内:読解力は「速読・速解力+語彙力+基礎的読解力」と提唱されていますが、速読力を高めるには語彙と基礎的読解力以外に何が必要なのでしょうか?

堀川:2つあります。「時間の概念を持つ」ことと「時間当たりの処理力をあげる」ことです。
入試だけでなく、限られた時間の中でどれくらいの量の情報を処理できるか、というのは社会人になっても重要な力となります。
速読というと「速く読むこと」が目的と思われていますが、速く読めるようになることで、演習の回数が増え、文法の理解・読解力向上に繋がっています。

竹内:目の動きや視野の広さが速読のポイントなのかと思っておりましたが、そうではないのでしょうか?

堀川:そのような能力も含んでいます。さらに短期記憶、集中力など総合的に鍛え、そこに国語力が絡んできます。しかし、ここにかけているのは語彙力です。ですから、御社と何かコラボしていけたらと考えているところです。国語においてデジタルでできるところは、かなりカバーできるのではないかと考えています。

竹内:そうですね。私も速読は、語彙が単位ごとに習得できている状態で特定の短い文章、そして速読の長い文章にあたるべきだと思っています。しかし、そこでゆっくり読んでしまう子どもがいるので、語彙や短文を習得した後、しっかりと速読のトレーニングを用意するべきだと考えています。国語力を鍛えるベースのところではご一緒出来ると思います。

堀川:今回は国語力というと漠然としたテーマでしたが、このように分解をして、ICTでできることできないことを判別しながら、常に問題意識をもっていくことが大切だと思います。