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レポート

灘中高の木村達哉先生が伝授する『生徒指導における3つのポイント』迫る新入試!生徒たちの学ぶ意欲喚起の方法とは?

 2020年10月25日(日)にオンラインセミナー『「キムタツ教育相談所」迫る新入試!生徒たちの学ぶ意欲喚起の方法とは?』が開催され、約200名の学校・学習塾関係者の方にご参加いただきました。講演では、灘中学校・高等学校 英語教諭 木村達哉先生をお迎えし、学び方が変わる中でも変わらない「指導の本質」を先生ご自身の経験を元に3つのポイントにまとめてご講演いただきました。

生徒指導における3つのポイント

どのような指導をするにしても、基本的には生徒が学ぶ気になっているということが土台になっているはずです。生徒たちが勉強してみたいなぁとか、学んでみたいなぁとか、もっと自分は向上したいなぁとか、そういった気分になるような取り組みをやっていくべきではないかと思っています。 今、自分がやっている指導は、放課後の補習ではなくて、あまり意欲が出てこない、もしくは出てこなくなってしまった生徒に対する面談の時間を放課後に取るスタイルにしています。 今日は自分が大事にしている3点、+1点を紹介させていただきます。

1点目 「甘えさせない」

何年か前から、子どもを褒めて伸ばしてみたいなあのところがあったりするんですけど、根拠もなく褒めてもあんまりやる気にならないですよね。無理やり褒めても褒める側の教員とか親がストレスを感じるだけです。
学校では、やたらと面倒見の良い学校もしくは面倒見の良い先生が「いい学校・いい先生」みたいな感じの風潮がもう20年ぐらい続いているように思うんです。必要以上に手をかけすぎると生徒たちはあまり勉強しなくなっていきますし、常に受け身の状態になっているんじゃないかなと思います。

僕は中学1年生で担任を受け持つと、必ず言うことがあります。それは「僕の授業を受けているだけでは成績は上がらない」ということです。これを教員が言うのは勇気がいります。それでも、僕たちはサポートできるけれども君の成績を上げるのは君自身なんだということを言います。
そもそも週に4回しか授業がないんです。たった週に4回で英語力が上がると思いますか?私達は1週間に130時間ぐらい起きていて、たかだか英語を4時間とか5時間とか勉強するだけで英語力が上がるなんてことはありえないわけです。そうすると成績が上がるためには家庭学習がポイントになってきます。 なので、こんな方法で家庭学習をするんだと、今日の授業の復習はこうするんだということを、めちゃくちゃ具体的に教えるわけです。 意欲を押すためには「そうか、自分で上げないといけないのだな」という意識を、いかに出せるかということが大事なんじゃないかなと思っています。

灘高は夏休みとかゴールデンウィークにほとんど宿題出しません。ただし休み明けに試験を行なうので、自分で勉強してこの試験をクリアできるようにしろといいます。補習もほとんどを行いません。補習をしちゃうとどんどん疲れてしまってですね、「家に帰ってまでも勉強はもうできない」みたいな感じになるわけです。夏休みとかゴールデンウィークはこんな風に勉強しなさいよという風な話をして、お手紙を渡して、ちゃんと見える化する形でお渡します。そして生徒たちには、LINEとかメッセンジャーをつかって遠隔で連絡を取ります。学校に来ているあいだは面倒見がよくて、離れちゃうと面倒見が悪いよりは遠隔操作で指導した方が生徒たちも結構心を開いてくれます。

2点目「目標設定と計画性」

大学受験程度の勉強っていうのはジグソーパズルなわけです。
そもそも、この子はまずどのピースが埋められて、どのピースが埋まってないのかということを自分でわからないといけません。どういった部分が弱点なのかを自分で認識させないといけません。リスニングができないとすれば、その原因はどこにあるのか、語彙力がないのかそもそも日々トレーニングをしてないのか、他の英語の音を知らないのかということを自分で分析させることが必要じゃないかなと思います。
やってはならない指導としては「がんばりや」とか「気合い入れや」という指導ですね。

最初に甘えさせないと書きましたけれど、ここの計画性に関してだけはうるさいです。勉強計画の見える化は非常に大事なことです。
僕はプリントをB4で作っているのですが、生徒たちはそれに「10月末までにどんなことやります」みたいなものを書きます。「数学の場合は11月末までにこういう問題集を必ず仕上げます」という感じで。目に見える化するわけです。
こういうのは特に高校2年生の秋ぐらいから、システマティックにやってやるとめちゃくちゃ伸びます。物理化学なんかは特に、難関大学狙っている子で理系に行く子は、できれば物理化学に関しては高2の秋から本格的に行って、高2の間にどっちか潰してほしいですね。
面談とは言わないですけど、廊下とかで会ったときに「あの計画表通りにやってるか」と聞くんです。もしずれていたら、計画を結構こまめにリメイクさせるようにしています。補習をやっているかよりも、その計画表をちゃんとチェックしてあげる方がやる気につながるんじゃないかなと思っています。

3点目「結果を出して自信をつけさせる」

3つめは、特に教員のスキルがかなり必要にはなります。先程話したとおり、結果も出てない子を褒めるのはあまり意味がないですが、結果を出してあげるということはすごく大事だと思うんです。
例えば英語の指導とか数学の指導で、やさしい問題を出して「あなたこれ80点だね。がんばったね。」とか言っても、「80点くらい取れるやろこの問題」というのは生徒が一番わかっていると思います。無理してほめるというよりも、ちゃんと力をつけてあげるということが大事です。つまり意欲を喚起するためには力をつけてあげるしかないんです。
僕は怖いと思われてると思いますが、性格的には結構笑顔な人間です。ただ、「英語に関しては全然妥協してくれへんな」と感じてもらうことはすごく大事なんじゃないかなと常々思っています。

ある程度、勝ち癖がついてきますと、偏差値40だった子が45、50になってきますね。50行った子は知識をつけてあげるだけで進研模試だと65まではいくんです。知識を覚えていれば点を取れるということに関しては、我々プロフェッショナルが覚え方も含めて教えてあげるっていうことが大事なんじゃないかなと思います。単に週に1回だけ単語テストやっていっても単語なんて覚えないですよね。あるいは週に1回のための単語テストの勉強を、その前日にするだけでは、そこで合格したって忘れてしまうわけですよね。だから脳に刷り込ませるような指導を、普段から勉強しておくということは指導者にとって大事なんじゃないでしょうか。

番外編 4点目 「こんな人になりたい」この人の笑顔が見たい

今回は3つのポイントということになっていますが、番外編ということで4点目です。
4点目ですが、師弟関係において一番強いのは何かというと、子どもたちに「こんな大人になりたい」と思わせられるかどうかではないかなと思っています。
子どもたちの世界っていうのは我々大人よりも随分スモールで、周りの大人は両親や親戚、祖父母、後はほとんどが先生ぐらいしかいない子が大半だと思います。その中で、学校の先生がもしもイライラしていたりとか疲弊していたりとか、あまり尊敬に値するとは思えないような存在であるとすれば、学校に来て師匠について学んでいる感じがないのではと思っているんです。
まあ僕みたいな人間であっても、「この大人いいなぁ」とか、「こんな人になってみたいな」といったモデルになれれば最高やなと思っています。それは多分塾の経営されている塾の先生とかも、一緒ではないかなと思います。

人間の幅、教養を深めるという意味では、色んなことを勉強することはすごく大事です。そういった師匠を通じて、子どもたちはこんな人になってみたい、こんないろんなことを知ってる人になってみたいという気持ちを、少しずつでも芽生えさせることができれば、その教員は一流です。

この1年間で色々と勉強しました。教育畑にいますので、全然知らないのはやばいなーと思ってたくさん本を読みました。ネットは間違った情報をまるで事実であるかのようにまるで専門家であるかのように素人が書いてるものがたくさんありますので、やはり書物が一番良いと思います。

しかし、疲れている師匠がちゃんと勉強できるでしょうか。疲れている師匠に子どもが憧れますでしょうか。
僕はできる限り自分の時間を確保するために、疲れない工夫をしています。例えば睡眠時間をしっかり取るとか、たんぱく質をしっかり摂るとか、昼ごはんをラーメンだけで済まさないとか。
寝る前にちょっと本読んでいるだけで、おそらく授業はできます。給料もらえると思います。ですが、指導者として一流になれないのではという思いは強く持っています。なので、自分で疲れてしまわないようにしっかりと日々の勉強する時間を確保しながらやっています。

まとめ

今回お話したのは、私たち指導者が生徒の意欲を喚起する方法です。
1点目は、自分の足でしっかりと歩ける子を作るということです。
2点目は、ある意味メソッド的スキル的になりますが「何をいつまでに終わらせるのか」ということをちゃんと管理してあげるということです。
それから3点目です。すべての勝負に勝つことはできないにしても、でもまあちょいちょい結果を出してあげるということが大事なんじゃないかなと思います。とくに自分の専門の教科については、正しい指導を行って結果をだしてあげて自信をつけさせるということは大事です。
そして最後の4点目は、教員自身が「こういう大人になりたい」と思われる大人になるということを今日紹介させていただきました。

参加者からの質問


意欲喚起としてとしてご褒美を与えることはどのように考えていますか。

ご褒美は根本的に与えてもいいと思いますけど、与え続けないと効果を発揮しないということは、もう随分前から教育心理学とかの中で分かっていることです。
その子がずっと学んでいる間、ご褒美を与え続けることができるのであれば構わないですけど、「ご褒美くれないんだったらもういいや」っていう形になってしまいがちなので、一般的には失敗すると言われています。
だから、大学に合格したらこれあげるよみたいなことをいう親御さんもいるんですけど基本的には失敗すると思います。それがゴールになってしまって結局は学び続けない子どもになってしまいます。


通年で授業をしていると授業がマンネリ化し生徒の意欲が低下してしまいます。
木村先生は普段の授業の動機付けはどのようにされていますか。


基本的には通年というより6年・3年・1年という風な形で、それぞれのシラバス(指導計画)を保護者と生徒に発表しています。
ゴールが見えないとマンネリ化しちゃうんですよ。なので、保護者にも生徒にも1年経った時に、「この子は英検でいうと準1級ぐらいのリスニング力はついています」と提示します。ただ、1年っていうのは遠いので、さらに3ヶ月タームぐらいの、ちょっとした目標をたてるようにします。
まずいのは、機械的に日々演習が続くとか毎日何か教科書だけを淡々と行っているとか、定期考査だけが節目になっているというのはあまり良くないんじゃないかなというふうに思います。
ポイントの2点目に掲げていますけれども、目標設定というのは常にやっぱり掲げておかないと、我々も仕事するときに何の目標もなく単に会社行って働け働けって言われてめっちゃやる気でできたとかそういう人はいないですから、やはり目標は大事ではないかなというふうに思います。

最後に弊社より、リーディングとリスニングをバランスよくトレーニングできる「速読聴英語講座」の紹介をさせていただきました。

今回ご参加いただいた皆様におかれましても、講演の内容が今後の指導の一助となれば幸いです。
木村先生、ご参加いただた皆様、ありがとうございました。

木村達哉先生

木村 達哉先生

灘中学校・高等学校 英語教諭
『夢をかなえる英単語 ユメタン』(アルク) 『夢をかなえる英文法 ユメブン』(アルク)『キムタツ式英語長文速読特訓ゼミ』(旺文社)『灘校生が実践しているTOEICTEST900点を当たり前のように取るためのパワフルメソッド』 (角川書店)など英語学習書の著書が多数ある。また、英語学習にまつわる講演を全国で積 極的に行っている。オフィシャルサイトでは、日々の活動や英語指導者向けのアドバイスなどを網羅したブログも更新中。

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