レポート
秋期定例研修会『新国語』で地域No.1を目指す!
2022年10月23日(日)「秋期定例研修会」を東京・ベルサール八重洲にて開催し、来春より提供を開始する新教材「新国語」の詳細を発表しました。
「スタディサプリ」で現代文の講師を務める柳生好之氏監修の下制作された同教材は、ICTを活用し「読解力」の養成に必要な語彙・文法・論理を鍛えるというもの。研修会では柳生氏と(株)市進ホールディングス代表取締役会長 下屋俊裕氏を迎え、教材開発の経緯や国語教育の重要性、そしてその可能性、現在の学習塾が取り巻く環境、社会が求める人材などについて語られました。
出展元 『塾と教育』2022年12月号
講演 株式会社言楽舎 代表取締役 柳生 好之 様
スタディサプリで現代文講師をしており、代表をしている株式会社言楽舎は国語教材の制作がメイン業務です。私が作った教材を生徒はどう使い、どう学習して、どう成績を伸ばしていくのか追跡したいという思いから「参考書と映像授業を使った現代文を教える『現論会』」を立ち上げました。ここで得たデータをしっかり分析し、教材作成に活かすという目的で塾を運営しています。現論会は大学受験のための塾ですが、国語力は小学生や中学生にも必要な力で、学習の開始は早ければ早い方が良いです。
昨今、学習法が多様化し、映像や参考書を見ながら自学自習する生徒を育てた方がいいという風潮になっています。これには「生徒が教科書や問題集、模試の解説が正確に読めること」が大前提なのですが、少し前に話題になった新井紀子さんの著書「AIvs.教科書が読めない子どもたち」では正確に読めている子はそう多くないと判明しています。子どもたちの読解力が落ちた原因は「娯楽」の変化にあると考えます。私たちやその少し上の世代では「国語は勉強しなくてもできるもの」と考えられており、実際それは正しかったのです。この世代が子どもだった頃、娯楽の中心は本を読むことでした。小説は読まないという子も漫画は読んでいました。娯楽の時点ですでに「読む」ことを徹底してやっていたのです。スマートフォンの登場で娯楽の主役は動画やゲームに取って代わられます。
さらにコミュニケーションツールとしてチャットアプリが登場しました。みなさんが友人や家族とやりとりする際、きちんとした文章を書いていますか? 「了解」とすら書かず「り」と省略したりスタンプを送るだけの返信になったりしていませんか? 小さな頃からそれに慣れた子どもたちは書く力も読む力も身につける機会がないまま成長しています。 一方、現在の仕事では読み書きの比率が上がってきています。対面でのコミュニケーションは減り、メールやチャットアプリなどテキストベースのコミュニケーションが増えました。子どもたちの読解力が下がっているのに社会ではより高い読解力が求められているのです。「国語力は自然と身に付くもの」と考えられてきたことで国語の指導は軽視されてきました。先生がきちんと指導できないため成績も上がりにくく、比較的得点しやすい他教科の学習が優先されてきました。国語力の差が他教科に大きな影響を及ぼすとわかったのはつい最近のことです。
現在の入試は国語だけに限らず全体的に文章量、文字数が増えています。大量の添削をする時間が取れないことから 回答は記述ではなく選択型。つまり文章を正確に速く読み解く力、「読解力」に重きを置くようになっています。 読解力を鍛えるにはまず語彙。言葉の意味を知らないことにはどうしようもありません。次に文法。文法教育は知識を与えるだけでなく、文法を使って正しく読み、正しく書けるところまでのトレーニングが必要です。これは「短文を用い構文を言い換えた場合に正しいか正しくないか」というようなトレーニングが適しています。文法の知識がどう生かされるのか、ゲームのような感覚でトレーニングすることが可能です。最後が論理力。私は論理を「数学Aで学ぶ論理のように、『でない』『かつ』『または』『ならば』の4つの言葉を正しく使い、推論したり正しいか正しくないかを判定したりすること」と定義し、それに基づいたトレーニングになっています。これは全教科に共通することです。そして、語彙、文法、論理力という基礎的読解力を鍛えるにはICT教材は非常に相性が良いのです。
大学入試では総合型選抜と学校推薦型選抜の拡大で面接や小論文が課され、読む・書く・話す・聞くの4技能が問われています。一般入試だけでなくここでも国語力の高い人間が求められる傾向があるのです。今後、塾では国語教育が中心となっていくでしょう。学ぶ力そのものを育てるときに国語が土台になるからです。解説を読む力、参考書や教科書を読む力をしっかり身につけた上で各教科の勉強をすると確実に成績が上がります。これからいろいろなスクールが台頭していく中、学ぶ力をいかに育てるかが勝負になると思います。
講演 株式会社市進ホールディングス 代表取締役会長 下屋 俊裕 様
2020年に約1億2250万人だった人口は、2060年には3割減の8800万人と予測されています。この時の生産年齢人口は4400万人で全 人口に占める割合は5割程度。子どもの数も減っていますが、働く年齢の人もどんどん減っていくのです。業界の人にとっての身近な数字を例に挙げると、約1050万人だった2010年の児童・生徒の数は2021年には100万人減の950万人となりました。全国の市町村で人口が3割以上減ったところは400カ所を超えています。
教える先生が減ってくるとオンラインを併用せざるを得ないのは自然の流れです。私たちの塾でもエリアの子どもたちの数の減り方をにらみながら、ライバル塾との競争も想定しながら戦略を練っています。これまで損益分岐点が100人だった校舎の生徒が70人になったとき、先生の構成変更や授業のオンラインへの切り替え、人件費削減、あるいは70人で利益が出るような体制への転換等、様々なことを実施します。いずれは教室を管理する先生が1人になって他の先生がいないという形になっていくのではないかと思います。
現在ライブ授業でうまくいっている塾ではオンライン導入に対する反発もあるでしょう。そういう塾はライブ授業をやりながら、一部でオンライン授業を取り入れるのがいいと思います。算数や数学、国語はライブで、理科社会はオンラインというやり方で生徒も先生も少しずつオンラインに慣れていく方法です。ただ、全てを自宅で完結できるようにはしないこと。自宅にいると勉強のスイッチが入らないのか、塾に行く機会が減るほど成果は上がりにくくなります。オンライン授業の前に一度は教室に来させるというワンステップを取り入れたり、ある程度は教室で受講させ慣れてきたら自宅からの受講に切り替えたりと、工夫が必要です。
今、オンライン授業がメインで成功している例が低学年です。低学年のお子さんは保護者が横について自宅で勉強するからです。保護者が送迎をしなくて済むことも継続率が高い秘訣なのでしょう。保護者を安心させるオンライン授業という視点で組み立てるとうまくいくと思います。今はまだライブ授業への要望が強いと思いますが、先生がいなくなることを見越し、オンラインを通したお子さんの面倒の見方について少しずつ準備しながら移っていくというのがいいと思います。
一時、AIが台頭した結果、多くの職業がなくなっていくという説が騒がれました。人の仕事がAIに取って代わられる。確かに一部の職業では仕事内容が大きく変わっていくものもあるでしょうが、職業自体が完全になくなってしまうものはそうないと思います。「先生」もこれまでの役割だった「授業をする」ことの大部分は映像教材等が担うことになりますが、職業としての先生がなくなることはありません。子どもたちの表情を画像判断することで理解しているか、集中しているかを即時に判断できてもモチベーションを上げることに関しては人間に軍配が上がります。子どもたちの表情や態度から適切な声かけをし、褒めることをしなければ長続きしないし、成績が伸びていたとしても継続は望めません。オンラインでも常に人が寄り添うように、映像授業が終わった段階での声かけなど、常に見ている、寄り添ってくれていると感じてもらえる工夫がライブ授業以上に必要となってくるでしょう。
デジタル教科書は、教科書、参考書、辞書と学習資料のほとんどがタブレットだけで完結するようになりましたが、全てをデジタルに切り替えてしまうことに私は抵抗があります。自分に合った辞書や参考書を自分で探すことや紙の辞書を引くことも決して無駄ではないと思うからです。演習問題やテストなど、紙ベースで行われた学習の方がデジタルのみの学習より定着率が高いというデータもあります。自らの手で文字を書くことは深くその人の記憶に残るようです。オンライン授業でも必ず紙を用意して、「書く」ことはさせるようにしています。
世界の人口73億人のうち英語人口が15億人、その中の4億人が英語のネイティブ、英語を第一第二言語としている人は11億人と言われています。学術研究の分野がほとんど英語です。英語の重要性はますます高まっていますが、相手とのコミュニケーションや交渉事には日本語がきちんとできることが前提となります。日本語で相手を説得する文を組み立てられない人は英語でも難しいと思います。まずは徹底した国語教育が必要だということに私も同じ意見です。
SRJ来期方針発表
各講演のあとはSRJの来期方針発表が行われました。まず、同社の2022年の取り組みや各検定の分析から見えてくる成果や受検者の傾向、その対応についての報告がありました。その後、今後の取り組みとして全国の会場で行う地域勉強会や、保護者・生徒向けセミナー、現場の先生向けのセミナー開催、販促物についてなど、導入塾向けのサポートに関するお知らせがあり、来春リリース予定の「新国語」が紹介されました。
基本構造としては語彙と文法と論理を鍛えるトレーニングとなっており、そこに確認テストが入る形です。レベルは目安として設けているが、おおよそ小4から始められる語彙設定となっています。高校生にはレベル設定していないが国語が苦手な場合は受講を推奨しており、小4から高1までの講座設定となっています。トレーニングはフルオートと自ら選択できる2パターン。コースはレベルに応じたものを選択することができます。ステージ分けされており、全12ステージに4回ずつ。年48回の設計が可能です。新国語の語彙トレーニングは1つ目から順にこなすのではなく、生徒の語彙力に応じてスキップして進める仕様です。文法では学習している技法が何かわかるよう表示されており解説も入っています。
新国語 メニュー画面
論理(基礎的読解力)問題
論理(基礎的読解力)解説
1回15分から20分が最短のトレーニングで週1回、月4回を想定しています。すでに開講中の国語の授業があればそれに組み込んだり、新たに開講する場合はドリル等を併用したりすることも可能。また、4月以降は複数教材受講の際の値引きがスタートするため、速読解・思考力講座とセットでの受講も提案しやすくなります。いずれにせよ塾に合う形で講座設計の相談に乗ります。堀川直人代表は国語教育が非常に重要であるにもかかわらず他塾が対策を講じていない今、来春リリース予定の「新国語」を活用することで地域での差別化を図ってほしいとのこと。「国語教育を科学し、教育にイノベーションを起こしたい」と力強く訴えました。